翻訳のくるしみ
2016.04.28
カテゴリ:エスペラント
翻訳のくるしみ
源氏物語第40帖「御法」7ページ目を
翻訳するにあたって苦しんだのは次の箇所。
- 原文
「方々におはしましては、
あなたに渡らせたまはんもかたじけなし。
参らむこと、はた、わりなくなりにてはベれば」 - 日本古典文学全集(小学館)の現代語訳
「あちらとこちらと別の所においであそばすのでは、
あちらにお出かけいただきますのも畏れ多うございます。
私がこちらへ参上いたしますのももう無理になってしまいましたので」 - 与謝野晶子の現代語訳
「離れた所では、こちらからあちらへ
歩いてお帰りになることがたいへんですし、
私もまたあちらへ上がることはもうできなくなっていますから」
これはだれのことばか。
紫の上とするか、明石中宮とするか、異論があるが、
両訳とも紫の上のことばと解釈している。
これは妥当だと思われる。
- しかし、全集本をみても何をいっているのか、さっぱりわからん。
- 晶子の訳ははっきりしているが、まちがっていると思う。
「離れた場所」というのを、
紫の上の二条院、中宮の六条院とみなしているようだ。
(これは離れている)
しかしここは、紫の上の西の対、中宮の臨時の御座所東の対
とするのがよいと思われる。 - また晶子訳は、「かたじけなし(畏れ多い)」を
「たいへんだ」とくずした。
ということで、さんざん、原文と全集訳を見て
熟考のすえ(というより、迷いちらかしたあと、)
ひねり出したエスペラント訳がこれ。
(晶子訳はあとで見た)
- “Niaj sidejoj estas apartaj, oriente kaj okcidente.
Iri al la okcienta alo estas tro estiminde.
Nun fariĝis ne eble mi mem veni ĉi tien refoje.”
わかりやすさはどうです??
a:1980 t:2 y:0